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気の向くままに / Rough Consensus, Running Code

2011年7月24日
by admin
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「レジリアンス」 しなやかな強さ

僕が「レジリアンス」という言葉をはじめて聞いたのは、総合地球環境学研究所の公開講座でした。たしか、「社会・生態システムの脆弱性とレジリアンス」の研究の一環として行われた公開講座だったかな。 http://www.chikyu.ac.jp/rihn/project/E-04.html そのままでは生きて行けなくなるほどの「自然のインパクト(洪水や干ばつなど)」があった際に、人間の営みがどういった対応をしていくのか。彼女らは、洪水や干ばつによるインパクトから食料生産が劇的に減少した地域を事例に、個人レベルで、集団レベルで、自分たちの生活や営みを変えながら、インパクトによって生じた不均衡を乗り越えて行く事例を、みせてくれました。たしか2回生のときに出会ったはず。 それ以来、複雑系などの考え方と相まって、いつもどこかに、考え方の根底に、何かしらの影響を与えられている気がしています。 これからますます大事になっていくと考えていることについて、少し書きたいと思います。 「レジリアンス」(resilience)ということです。辞書を引くと「復元力」とか「弾力性」などと訳されています。私が翻訳するときは「しなやかな強さ」と訳したりします。「何かあってもまた立ち直れる力」のことです。 私が最初にこの概念を知ったのは、ずっと昔のこと、夏休みに宮古島に遊びに行ったときのことです。島の耕地の大部分はサトウキビなのですが、それがまっすぐに立っているのではなく、どのサトウキビもまるで地面に寝ているかのように、横になっていたのです。 「どうしてサトウキビが寝ているのですか?」と地元の方に聞いたところ、「台風が来たからね」とのこと。 このサトウキビは、もともとは立って生えているのですが、宮古島にはよく台風がやってきます。強い台風が来たときにしっかり立っていると、ポキッと折れてしまう。ですから、強い風が吹いてきたら自分から倒れて(?)風を避けるよう、何代もの品種改良を経て、そういうサトウキビにしたそうです。 風に抵抗するのではなくて、倒れる。それで、風が弱くなると立ち戻ってくる。この「しなやかな強さ」をここのサトウキビは持っているから、台風が来ても生き残れるんだ~!と感動したのでした。 当時はまだ「レジリアンス」という言葉を知らなかったのですが、この話はとても面白くて、しなやかな強さという概念はその時からずっと自分の中に残っていました。 今回の大震災で、よく「東北の人は強い」と言われます。石巻や気仙沼の被災地にお邪魔し、地元の方々とお話ししたりして、「でも、その強さは、ある人一人の強さではなく、この地域には“強い風に倒されても、立ち直れる土台があるからこそじゃないかな」と思いました。それは、地域の人々の強いつながりだったり、暮らしを支える歴史や伝統・文化だったり。しなやかな強さ(レジリアンス)なのです。 一方、今回の大震災は、日本の社会や産業がこの「しなやかな強さ(レジリアンス)」を失っていたことをまざまざと見せつけらました。 たとえば、震災後、物流が完全にマヒしました。大きな震災の後、一時的にいろいろなものが止まるのは仕方がないとしても、かなり長期間物流がマヒしてしまった。それは、「何かがあったときに、かなり長期間マヒするような構造になってしまっていた」ということだと思います。「一時的には止まるけれど、その後しなやかに回復する」といった物流システムではなかったということではないでしょうか。 同じことが「生産」でも起こりました。日本の多くの企業は、部品が調達できなくなり、さまざまなものが足りなくなって、工場の生産をストップしなくてはなりませんでした。日本国内だけではなくて、世界の工場でも同じような状況になりました。 それはどうしてかは、当時の新聞に書いてあります。「特定の1社から部品を調達すれば、まとまった数になるので安く仕入れることができると、調達先をしぼって1社だけに依存する構造になっていた。そこが今回の震災のように、何らかの理由でダメになると、全てがストップしてしまう」。 これは、何も問題がないとき、つまり「平時」には一番効率の良い方法ですよね。大量に発注して値段を安くする、それが競争力を高め、売り上げの増加にもつながる、という形でいい循環が回っていた。しかし何かあったときのしなやかに回復する力は、実はこの構造では弱かったことがわかりました。 日経新聞にもわかりやすく、このような解説がありました。「各企業は、生産や販売に無駄な時間をかけたり、在庫を持ったりしないですむ体制づくりを目指してきた。ジャスト・イン・タイムという生産方式がトヨタから始まって、世界に広がっている。ただ、今回のように、部品の供給が止まると、すぐ生産停止に追い込まれるという弱点も抱えている」。 物流にしても生産にしても、昔のシステムではあちこちに在庫がありました。しかし「それでは効率が悪い」ということで、在庫を持たない、コストが安い、効率がいい仕組みに変えてきたのですよね。 そうして、短期的な経済効率を重視するあまり、(平時にはその重要性が見えにくい)中長期的なレジリアンスを失っていた、ということではないかと思うのです。 これからの時代を考えると、世界的には人口やさまざまな圧力、競争が増大し、国内的には人口も市場も縮小し、高齢化・過疎化が進む中、温暖化やエネルギーなど様々な問題が悪化していくという、将来が先細りになっていく社会です。 このような状況の中で、それでもどうしたら、しなやかに強く生きていくのか、しなやかに強い地域や社会をつくっていくのかを考えないといけない。 短期的な経済効率だけでなく、短期的にはコストアップや効率ダウンに見えたとしても、中長期的に、何かがあったときにも「それでもしなやかに強く立ち直れる強さ」も重視し、企業経営や社会づくりに組み込んでいかなくてはならない。そうしないと、本当に幸せな社会にはならない。そう思うのです。 レジリアンスに富んだ社会とはどんな社会でしょうか? 何がレジリアンスを創り出すのでしょうか? どのように組織や社会に組み込んでいったらよいのでしょうか? quated from 「枝廣淳子の環境メールニュース」 http://www.es-inc.jp 引用・転載は出所を添えて、ご自由にどうぞとのことなので、ほぼそのまま転載。 e`s 「しなやかな強さ(レジリアンス)のある社会へ (2011.07.21)」 http://www.es-inc.jp/lib/archives/110722_043144.html ◆次回へのメモ。 現代社会における、社会システム、生産・物流システムのレジリアンス。都市のレジリアンス。 自然のレジリアンス。人間の営みのレジリアンス。 時間のあるときにでも、何か書きたいなー。